読書メモ: はじめてのアメリカ音楽史(2) ゴスペル
引き続きこちらの本のメタデータ化として、プレイリストを作成したり関連動画などの資料を掲載する。ブルーズも入れたかったが埋め込みが多くなってしまったのでまた次回。
ゴスペル
(シンガー、曲単位で挙げられたものはこのプレイリストへ。アルバム単位で挙げられたものは以下の文中に埋め込み)
黒人霊歌
黒人奴隷として連れてこられる以前から、アフリカ土着宗教の祭礼では歌、太鼓、踊りがあり、多様なリズム、シンコペーション、チャント、コール&レスポンスがすでに存在した。
この Ring shout の再現の様子はアメリカ音楽と融合してからのものではあるが、楽器が無くても高度な音楽が成立している。 www.youtube.com
キリスト教への改宗が進んでからはプランテーションの奥深くの隠れ家(Hash Harbor)に集まって歌や踊りに興じた。見えない協会(Invisible Church)とも呼ばれた。これらは黒人霊歌(Nigro Spirituals)となった。歌詞には脱出等の暗号が隠されていた。
- Steal Away
- Swing Low, Sweet Chariot
- Go Down Moses
白人が書いた霊歌もある。
そうした中で Fisk Jubilee Singers(19世紀後半)など音楽的に洗練されたグループも登場した。
クラシック歌手も生まれた。
- Roland Hayes
- Marian Anderson
ゴスペル
シカゴでゴスペルが成立した。新約聖書が題材になっているものが多い。歌い継がれたものではなく、新たに作詞、編曲された。楽器の伴奏がある。
アトランタ出身でブルーズを下地にし、シカゴへ移ったThomas Dorsey(1899-1993)が有名。
- Precious Lord
- Peace in the Valley
Mahalia Jackson
ニューオーリンズの貧民街生まれでラグタイム、ブルーズ、ジャズを聴いて育ちシカゴに渡った Mahalia Jackson(1911-72) は Dorsey の歌を歌って広めた。当時すでに蓄音機、レコードは普及している。
- The Lord's Prayer
- Didn't It Rain
真夏の夜のジャズでも観ることができる www.youtube.com
キング牧師のスピーチとともに黒人霊歌やゴスペルのクラシックを披露した。
- I've Been Buked and I've Been Scorned
- How I Got Over
そのころ Rosetta Tharpe(1915-73)はナイトクラブに持ち込み好評を博していたが、あくまで Mahalia は教会を中心に考えていた。
Mahalia の葬儀では Aretha Louise Franklin(1942-2018)が Precious Lord を歌唱した。
その他のシンガー、グループ
有名な男性カルテット
- The Dixie Hummingbirds
- The Golden Gate Quartet
- The Swan Silvertones
白人シンガーソングライターPaul Frederic Simon は The Dixie Hummingbirds のファンで、Love Me Like a Rock のバックアップボーカルを依頼している。また、The Swan Silvertones の Jeter 牧師の Mary Dont' You Weep に影響を受けた歌詞があったり自身のソロの Take Me To The Mardi Gras で共演したりした。
Harry Belafonte(1927-) はフォーク・リバイバル運動を支え、ルーツ・ミュージックを得意としている。
James Cleveland(1932-91) は聖歌隊(Gospel Choir)のスタイルを築いた。
1960以降
以下のようなシンガーが活躍した
- Clara Ward(1924-73)
- Marion Williams(1928-94)
- The Staple Singers
- Kirk Franklin(1970-)
- Take 6(1980-)
ゴスペルの人気曲
- My Life Is In Your Hands
- Amazing Grace
- Make Us One
- Oh Happy Day
- Total Praise
- Silver And Gold
上記以外の著者のおすすめアルバム
感想
黒人霊歌はヨーロッパの音楽と対照的でとても興味深かった。というか、聞いていて純粋に楽しい。クラシックのように鑑賞するものではなく、一緒にやりたいと思えるものだった。
西洋音楽は全部理屈から入っていて、三位一体だから三拍子は良いものだとか、波形的に一番増幅されるのが5度だとか、そういうのから音楽を作ってるけど、黒人奴隷の音楽は字が読み書きできない、教育を受けられないという制約の中で理屈無しに気持ちいいものが作られるのが対照的だな
— ishikuro.shunsuke (@ishikuro_s) June 20, 2022
Ring shout は遅くとも1840年には記録がある。ヨーロッパではロマン派の時期で、お嬢さんがショパンを習ってる頃。一方で黒人奴隷は音楽学校行かなくても大抵音楽エリートだったってことよねhttps://t.co/xuJAEKJseN
— ishikuro.shunsuke (@ishikuro_s) June 20, 2022
一方で、キリスト教に全く共感できず、ゴスペルはいまいちピンと来てない。虐げられた境遇から神に救いを求めるという流れなのは仕方がないが、音楽と宗教が強固に結びついている。いくら音楽的に技巧がなされていても、それが向く先が神というのに気づくとさめてしまう。自分は恵まれた環境だからか、どうしてもカルト的に見えてしまうので抵抗がある。
Invisible Church の時代、宣教師は Camp Meeting というゲリラ的な布教をしていたようで、それが今でも受け継がれているらしい。YouTube でも、ある宗派の Camp Meeting の動画が見れるのだが、音楽を使って集団催眠、トランス状態に盛り上げていっておりこれはさすがにちょっと受け入れられなかった(なおコメント欄は絶賛)。日本では特にオウム真理教の事件があったので警戒モードになってしまう。
これは西洋音楽史のバロック期、古典派をやったときのピンとこなさと似ている。グレゴリオ聖歌同様、Nigro Spirituals や Ring Shout はプリミティブな音楽って感じでかなり好きなんだけど、洗練されて様式的になっていくにつれ、一気に興味が無くなってしまう。
次回はブルーズを学ぶ。ブルーズは発展経緯から、権威とかけ離れているので少し期待しているがどうなるだろうか。