ADHDの過集中を活かす方法
概要
ADHD 特性を抑えるだけでは通常の人の能力に準じた働きしかできないことになってしまう。秀でている部分を使用してやっと期待される生産性に漸近する。
デスクワーク、知的労働の場合に限れば過集中をいかに正しい方向に使うかで明暗が分かれる。過集中の内容を仮定のもとで分類し、使い分ける方法を書く。ADHD の諸氏は参考にしてほしい。
概念
過集中
セロトニンの流通量が悪く一度発生したドーパミンを止めにくいことが原因。セロトニンが少ないということは前頭前野の働きも悪く注意の向け方を切り替えられないため、他のタスクの存在が希薄になる。とてつもない集中力を発揮できるがその代わり間違った箇所に没頭した際の損失が大きい。過集中は直進する銃弾のようなものであるから最大の成果を得るには正しい方向に向けなければならない。
成果だけに着目すれば便利なように見えるが、体力、精神には多大な負荷がかかることに注意しなければならない。特に、12時間以上の継続は運動、食事、睡眠など精神的な部分の回復に直結した活動が排除される。メタ認知もできなくなる。結果的に抑鬱傾向が強くなってしまう。何日も連続すると睡眠不足から双極性障害の症状が出てくることもある。
平常時の集中力
動機の無い活動には全くドーパミンが出ず、集中も維持できない。締め切りを作り、飽きるまでに高速に処理し続けられれば対処しやすい。コンサータの働きの体感は、短い過集中で消化している感覚に近いらしいが私は投薬無しでできることを模索している。
マルチタスク
できない。これは定型発達でも同じ。人間の脳は並行したタスクがあるとパフォーマンスが大幅に劣化するらしい。どうしてもやらなければならないときはメタ認知のスキルを駆使してワーキングメモリの整理を常にし続ける必要がある。
メタ認知
マインドフルネス瞑想を習慣化することでワーキングメモリの整理や注意の向き先を制御できるようになる。このように自分が何を考えているかを考えることをメタ認知と言う。
普段はメタ認知をよく働かせるべきだが、向き先が正しい過集中の際はあえて忘れてもよいこととする。
ポモドーロテクニックの扱い
ポモドーロテクニックは25分区切りでタイマーをセットすることでメタ認知を定期起動することができるようにする手法だ。
マルチタスクで浅い概念を広く扱わなければならないときはメタ認知が必要なのでポモドーロテクニックを利用しての休憩が必要である。しかし、深いものを深いまま扱うときは自分の特性としてむしろ得意なのだから、中断させないほうが重要だ。ポモドーロテクニックは普段の仕事では有用だが、プログラミングの一部の作業ではあえて無視してみる。
ラベリング
ADHDはワーキングメモリが小さいため、情報の階層構造を持ったり概念を一旦棚上げするのが苦手だ。これを認識しメタ認知を利用して階層化、棚上げを意識的に行うのは効果的である。
これに関連し、注意が逸れた際にその対象を封じておくための工夫をメソッド化する。脅威や報酬に短い名前付けをするとその情報が圧縮され一度脳の興奮が収まる。これをラベリングという。さらにそれを文章に書きだすことで脳のワーキングメモリを解放できる。
方法
どのモードで仕事をするか、メタ認知が優勢な朝に先に決めておく。各モードの名称は私の命名による。きちんと今の作業モードを認識するため、各モードでデスクトップの背景色を決めている(Sprint:赤、Typical: 黄、HF: 青)
Sprint: 細かいタスクをやるモード
短距離走のごとく高速に処理することで注意の向き先が逸れるのを防ぐ。完全に疲れるまで続けてもよい。雑務は存在するだけでワーキングメモリを消費するため一日の初めにこのモードで細かいタスクを刈り取っておく。
Typical: 定型発達を模倣するモード
以下のようなときに必要:
- 設計など、関連する要素が多い難しい概念を扱う
- 連絡待ち、連携などで作業が細切れになる
- 毎日少しずつやらなければならない勉強をする
- やり直しがきかない、間違った際のリスクが大きい作業をする
集中できないため最も生産性が落ちる。ポモドーロタイマーを守りなるべく定型発達のような動き方に近似させる。複雑でない作業であれば生産性低下を許容するため、食事をするならそのときが良いかもしれない。
以下のようなメタ認知スキルはフル活用する。
Hyperfocus(HF): 大きいタスクをやるモード
最も活用するべき、過集中モード。職種、所属先チーム、ロールを選ぶ際は HF をなるべく長くとれるものにする。
正しい作業に注力できていなければならないため、タスクの内容自体はよく検討したり、チームメンバーと相談したものにするべきである。
完全にこのモードに入ってしまうと12時間以上、飲まず食わずで離席もせずに作業してしまうため、開始時は常識的な時間で収まるようなアラームを必ずセットしておく。
作業中は HF の効果を上げるために極力、コミュニケーションを排除する。通知の類は最小限にする。糖質は血糖値スパイクによる低血糖が課題になるためあえて食事も無理にとらなくてよいことにする。
メモ帳を常に用意しておき関心が移りそうになったらメタ認知を働かせてそちらにストックする。ラベリングで情報を圧縮したほうがいいので短いタイトルも都度つける。
その他、ワーキングメモリをうまく使うための補助的なツール
すぐに書けるメモを用意しておくとよい。どんなフォーマットでもいいが5秒以内に書けるような状態になっていること。
- Windows なら付箋(Sticky Notes)をタスクバー一番左にピン止めしておき Win+1 で起動できるようにする
- スマホなら Google Keep をホーム画面からすぐに起動できるようにする
Stacking: 詰まったときのフレームワーク
途中困難で面倒な作業に当たってしまい集中が途切れることが多々ある。一旦、メタ認知に戻り階層化、棚上げを意識しなければならない。以下の手順で頭の中を整理する。脳のワーキングメモリとアセンブラのサブルーチンの類似から着想を得た。
- 大本の作業の文脈を言語化してメモに保存する
- 特別に対処が必要な課題とパラメータだけを抽出して別項目としてメモを始める。大本の文脈はいったん忘れる
- 課題がクリアになったら元の文脈を読み直し文脈を統合する
Dumper: ワーキングメモリのクリア
Dumper は私が考案した造語。思考を dump するためのメモを指す。
何か興味が逸れる脳の興奮があったら手が動いてしまう前にメタ認知を起動させ、どこかにメモする。メモする際は短いタイトルもつける。これによりラベリングが為され脳の興奮を沈めたりワーキングメモリの効率化ができたりする。
読書メモ: はじめてのアメリカ音楽史(3) ブルーズ
今日もやっていく。よくブルースとカタカナでは表記するけど、本来の発音は blue という有声音にsがついてるのでブルーズってことなのだろう。news = ニューズと同じだね。
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