今日もやっていく。よくブルースとカタカナでは表記するけど、本来の発音は blue という有声音にsがついてるのでブルーズってことなのだろう。news = ニューズと同じだね。
ブルーズ
今回は曲数が多い
成り立ち
ブルーズのリズムについてだけ言えば、アフリカ西部、サバンナの地域に源流があるという(諸説あり)。とはいえ、今のブルーズになるまではアメリカ内の歴史が関与している。
奴隷の労働でのコール&レスポンスを伴うWork Songs(労働歌)や孤独から気を紛らわせるための、叫ぶようなField Hollers(即興歌) から発展した。1800年代ではアメリカ生まれの黒人ばかりになっており母語が英語なので歌詞を英語で作れるようになっていった。
最初に録音されたブルーズは1920年の Mamie Smith のものだが、実際は奴隷解放(1865)からほどなくしてブルーズの形式は出来上がっていた。
時代背景を先に述べると、自由人となっても借地小作人となり搾取されていたため、メンフィスからヴィックスバーグに広がるデルタ地帯に新天地を求めたが、そこでも奴隷とさほどかわらぬ生活が続いていた。ジムクロウ法、KKKの台頭などもあった。ここでの原始的なブルーズは、カントリーブルーズ、デルタブルーズと呼ばれる。
デルタブルーズの有名な歌手
- Charley Patton(1891-1934)
- Son House(1902-88)
- Skip James
- Big Joe Williams(1903-82)
- Robert Johnson(1911-38)
- Bukka White
- John Lee Hooker (1945以降だがデルタブルーズを受け継いでいる)
Robert Johnson は逸話が多く、これをモチーフにした映画もある。
Blind Willie Johnson のようにゴスペルとの中間的なスタイルもあったがほとんどはゴスペルと正反対に世俗、苦痛を歌ったものだった。
ギター
19世紀終わりにメキシコからギターが伝わり、ハラーと合流。
ギター、ハーモニカ、バンジョー、瓶(Jug)、手製フィドル、洗濯板、スプーンなど身の回りにあるもので楽器を代用した小編成のバンド Jug Band が1920年代に流行。ヴォードヴィル、Medicine Show(ガマの油売りのような移動興行)も盛り込んでいた。ブルーズは Jug Band から様々な楽器を取り入れている。
1940年代にはエレクトリックギターが使われるようになり、瓶の首をスライドさせるボトルネック奏法が生まれ、スライド、グリッサンド、ビブラートなどの表現が発展した。しかしギターの入手性は悪く、はじめは自作のDiddley Bow(針金の弦が一本だけの楽器)だけで演奏していた者も多い。
- Elmore James(1918-63,ミシシッピ出身)
- T-Bone Walker(1910-1975) 初めてエレクトリックギターをブルーズで使った
- Stevie Ray Vaughan(1954-90)
- Lonnie Johnson(1899-1970, ニューオリンズ出身)
- Blind Blake(1896-1934) 盲目。ギターでのラグタイムを確立
ハープ(ハーモニカ)
値段が安いためよく使われた。シカゴブルーズにも影響を与えた。
- Sonny Boy Williamson I (1914-48)
- Sonny Boy Williamson II (1899-1965)
- Little Walter(1930-68)
- Paul Butterfield(1942-87)
テキサス
- Blind Lemon Jefferson(1893-1929) カントリーブルーズ
- Lightnin' Hopkins(1912-82)
メンフィス
デルタブルーズよりは洗練されていた。多くのブルーズマンがメンフィスへ渡った。
- Jim Jackson
- Frank Stokes
- Sleepy John Estes
- B.B. King(1925-2015)
シカゴ
ミシシッピ側を北上してくとデルタ地帯、メンフィス、シカゴが順に辿れる。WW1とWW2の間に大勢の黒人が北部の工業地帯へ移動した(グレートマイグレーション)
もともとは Juke-Joint(安酒場)で一人で歌うものだったのが、1930年代はシカゴでのレコーディングを目指すようになる。中西部、西海岸などの都市でもブルーズが盛んになる(シティブルーズ)
ブギウギ(boogie-woogie)というピアノ奏法はシティブルーズに影響を与えた。
- Jimmy Yancey(1898-1951)
- Roosevelt Sykes(1906-83)
- Meade Lux Lewis(1905-64)
- Memphis Slim(1916-88)
- Pete Johnson(1904-67)
シティブルーズの代表
- Leroy Carr(1905-35) シティブルーズの元祖
- B.B. King ジャズのギターアドリブ、ゴスペルのシャウト、スクィイーズ奏法
- Muddy Waters バンドサウンドを確立した。
- Little Walter
- Otis Rush(1935-2018)
- Magic Sam(1937-69)
- Buddy Guy(1936-)
- Johnny Shines(1915-92)
- Howlin' Wolf(1910-76)
女性シンガー
- Mamie Smith(1883-1946) ヴォードヴィル出身。黒人歌手として初めて録音した -Ida Cox(1888-1967) ミンストレルショー出身
- Alberta Hunter(1895-1984)メンフィス生まれでシカゴに移り、ニューヨークでもレコーディングした
- Ma Rainey(1886-1939)
- Bassie Smith(1894-1937)
- Memphis Minnie(1897-1973)
- Big Mama Thornton(1926-84)
- Koko Taylor(1928-2009)
- Etta James(1938-2012)
Etta James はキャデラックレコードで Beyonce が演じている www.youtube.com
- Bonnie Rait(1949-) Son House に影響を受けた白人女性
その他著者がすすめるアルバム
Before The Blues, Vol. 1 - Compilation by Various Artists | Spotify
感想
前回予想した通り、ブルーズはどの時期も嫌いじゃない。それでも戦後の豪華なバンドはちょっと好みから外れてしまう。シンプルに、ギターやハープに歌わせるのをじっくり聞きたいと思ってしまう。ワーキングメモリの少なさが関係しているんだろうか?
ギタリストはブルーズに行き着くというのも納得した。アンサンブルやエフェクトが無くとも、一本のギターだけでも聴かせる魅力がある。粗悪な楽器のピッチのゆらぎすら味が出ている。
そして、自分にとって一番響くのは Work Song, Field Hollers だ。グレゴリオ聖歌、黒人霊歌同様、原初の音楽のなにが自分を引き付けるんだろう。ジャンルを横断的に聞くことで本当に好きなものの根源が分かってくるような気がする。引き続き音楽史を追っていきたい。