読書メモ: 西洋音楽史 (3/4) ロマン派
所感
今回はロマン派である。通俗的な音楽と、音楽そのものを探求する音楽とで分離があった時期らしい。私がどうやっても面白味を感じられないのはこの通俗的な方面のようだ。古典派で王をたたえる音楽が終わったかと思えば今度は成金のステータスのための音楽が始まってしまった。お高くとまった雰囲気がどうしても自分のモードではない。
ピアノ教室で習うような教本はこのサロン音楽の時代のものだ。私個人としては教本で弾きたいと思える教材が無いこと、ピアノ教室が育ちのよさをなんとなく醸すお稽古として君臨していることは、この当時の習慣がそのまま継承されているからだろう。
そしてやはり古典派ベートーヴェンに続きドイツの芸術音楽やワーグナーのオペラはまだわかりやすい情熱、力強さがあり面白味が感じられる。
サロン音楽のように、音のみで判断しても自分に合わないものは歴史を知ってなおさら自分に馴染まないのが分かったので、直感はなかなか信用できると思った。一方で、民衆の音楽であったり哲学であったりと、自分の体験に近い音楽は音だけ聞いても心を打つものがあったり、もう少し傾聴してみたいと思えるものであった。
しかしながら、ロマン派を経てもクラシックへの取っ掛かりになりそうなお気に入りの曲を見つけられなかったのが残念だ。
ロマン派(1800年)
オペラ、定期演奏会に通い、ピアノを娘に買い習わせることが市民のステータスになっていた。このため、作曲家はパトロンの求める型に応じるのではなく市場に対し個性をだしていく必要があった。批評、名演という概念が生じ数世代前の楽曲を楽しむことにもつながった。
物量作戦
ツェルニー Carl Czerny
「聴衆の大半は感銘を与えるよりもアッと言わせる方が簡単な客」
ベルリオーズ Louis Hector Berlioz
二本のコルネット、チューバ、三本のトロンボーン、二台のティンパニ、大太鼓、シンバル、鐘
パガニーニ Niccolò Paganini
「パガニーニの演奏技術は、悪魔に魂を売り渡した代償として手に入れたものだ」と噂された。重音、倍音効果、通常とは異なる調弦スコルダトゥーラ scordaturaなど。
リスト Franz Liszt
ツェルニーの弟子でパガニーニにも感銘を受けた。オクターヴの跳躍、分散和音、トレモロなど超絶技巧
タールベルク Sigismond Thalberg
リストのライバルで、三本の手で弾いているかのような技術を発明した。
クレメンティMuzio Clementi
難しいパターンの曲を練習させるための教本を作った
グランドオペラ Grand opera
パリで行われていた波乱万丈の大作オペラ。成金趣味の観客が多かったとされる。
ケルビーニ Luigi Cherubini
スポンティーニ Gaspare Spontini
オーベール Daniel Auber
ロッシーニ Gioachino Rossini
ジャコモ・マイヤベーア Giacomo Meyerbeer
ユグノー教徒 Les Huguenots は19世紀最大のヒットだった。
サロン音楽 Salon music
サロン salon とは宮廷や貴族の邸宅にあった社交界。主人が文化人を招いて知的な会話を楽しんだ。スター志望のピアニストはパトロンを見つけにこのような場に演奏に行った。
以下のような曲が好まれた。
- 即興曲 Impromptu: 自由な形式で書かれた短い作品
- ワルツ waltz: テンポの良い淡々とした3拍子の舞曲
- エチュード Étude: 練習曲
- ノクターン Nocturne: 夜をテーマにした小品
- オペラ・パラフレーズ
以下のような文学作品でこのような上流階級が描かれている
映画"イノセント"の冒頭も参考になる
先に挙げたリストおよびショパン Frédéric Chopinがサロン音楽の頂点にあった。
簡易版サロン音楽も作られ、これらはトリビアル音楽、キッチュKitschという通俗的なものとみられることもあった。
マスネ Jules Massenet
グノー Charles Gounod
バダジェフスカ Tekla Bądarzewska-Baranowska
乙女の祈り Maiden's Prayer はこのような小品で最も有名
ドイツの芸術音楽
娯楽音楽と芸術音楽の分離が起こり始めた。
ショパンの2曲の聞き比べ
リストの2曲の聞き比べ
ヨハン・シュトラウス Johann Strauss IIも芸術音楽に寄せた作品がある
無言歌
技巧や歌詞を排して器楽のみで奏でられる歌を目指した
シューマン Robert Schumann
メンデルスゾーン Felix Mendelssohn
標題音楽
漠然とした情緒ではなく理念を表現しようとした。
物量作戦で挙げたベルリオーズ、リストもこの代表。
絶対音楽
音楽は文学を描写したものではなく音楽自体によって完結した芸術であるという考え方
ブラームス Johannes Brahms
標題のついた作品をほとんど残さなかった。
ロマン派
産業革命、実証主義の裏返しで民衆は音楽に感動を求めていたことから、古典派から以下のような変化があった年代だった。
旋律
バロックでは通奏低音が主役であり旋律は控えめだった。古典派では旋律がリードするが構築的だった。ロマン派では旋律がさらに人間らしいふるまいになった。
チャイコフスキー Pyotr Ilyich Tchaikovsky
和声
古典派までは和声は旋律を支える役割だったが、ロマン派では和声それ自体が音楽表現の焦点となった。
シューベルト Franz Schubert
トリルに注目
ワーグナー Richard Wagner
上のような作曲技法でロマン派の集大成となった。
(後期ロマン派~現代へ)