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血糖値センサーでわかる食事と脳の関係(前編)

免責: これは自己責任で人体実験をやっているものであり、真似して何か問題が起きても責任は持ちません。深刻な疾患がある方は医師との相談を必ずしてください。

NFCセンサーによってスマホでデータを読み出せる血糖値センサーが出ていたので試してみた。メモ機能を活用し、眠気が出たり不調が生じるときと食事の関係をある程度みることができたのでまとめておく。糖質単体を取るのは避け肉や野菜と一緒に食べたほうが集中力は持続することが分かった。また、自分自身が慢性的な低血糖状態を招いている体質の可能性があることを確認できた。発達障害であることを手掛かりに模索はしているが、多くの人にも共通するメカニズムではあると思う。

背景

日中に高い集中力を持続させたいが、食後に眠気がひどいしそうでなくても耐えられないほど眠くなることがある。

前提知識として、脳のエネルギー源となるのはブドウ糖(グリコーゲン)のみであり、その量は血糖値として測ることができる。これが常に適正であればよいが、空腹だからと言って甘いものを食べると今度は体が血糖値を一定に保とうとするためインスリンというホルモンで急激に降下させてしまう。この上下のコントロールをうまくするのが秘訣だろう。

私は体質改善には余念がなく色々と調べるうちに市販のセンサーがあるという情報を知ったのでまずはここから値を取って実験してみようと思い立った。

midori-hp.or.jp

また、私は大人の ADHD である。ADHD と糖の関係はいろんなところで耳にする。糖質制限が良いとは言うもののネットの文献では理屈がはっきりしない。栄養と関連した ADHD の問題は、セロトニン不足、ドーパミン不足であるがこれが血糖値の上下と関係するという話なのだろうか。

こちらの本によれば、以下のような悪循環だという。

  1. 慢性的に腸内環境が悪くなっている
  2. このために栄養素からの脳内伝達物質の生成がうまくいっていない
  3. さらにビタミンB群不足によりブドウ糖以外からグリコーゲンを生み出す"糖新生"が働きにくくなっている
  4. 食後のインスリン分泌による血糖値の急降下に対処できず低血糖になっている
  5. 低血糖は衝動性、イライラ、不注意を生み出す

この循環の他にも、糖分の摂取という行為は依存性があるのに対し ADHD は報酬回路の不調で依存症にかかりやすいという相性の悪さがある。

これも自分に当てはまっているのだろうか?腸内環境が万全かを調べる方法は、理解のある医師に検査してもらうくらいしか思いつかないが発達障害専門の良いかかりつけ医を探すのはかなり難しい。

そういうこともあり、センサーを使って自分で調べてみることにしたのだ。

方法

Freestyleリブレは個人でも手に入る血糖値センサーだ。冒頭のツイートのように、腕の目立たないところに貼り付けるだけで2週間継続してデータを収集してくれる。NFC でデータをやりとりできるので専用スマホアプリと連携させてスキャンすれば好きな時にグラフを取得できる。

厳密には血糖値センサーではなく、皮膚の下の細胞のグリコーゲンの濃度を取っており、血液から検査する方法に比べて15分ほど遅れた情報になるようだが、今回の実験では区別の必要が無いため一律で血糖値と呼ぶことするにする。

これで、眠気があったり頭が働かないとき、あるいは明瞭に動いてくれているとき、どんな血糖値のグラフを描いているのか、そして直前に食べたものはどう影響するのか確認していくのだ。

やってみた

ジャンクフードを食べるとどうなるか

そもそもジャンクフードを遠ざける暮らしをしてしまったので実験期間中、測れていなかった。食べていたつもりになっていただけでデータとして残っていなかった。がっかり。しかし次の項目でジャンクフードで実験する意味もなくなるほどの驚きの結果が出た。

中~低GI値食品を単体で食べるとどうなるか

GI値とは、ブドウ糖を100とした血糖値のグラフ変動面積の比率だ。あくまで面積なのでピークの値とは連動していないし、ピークが高くなる食品はインスリンによる急降下があるためGI値は低くなるから参考程度である。とはいえ、同じ種類(穀類、飲料、とか)のなかであれば低いものを取ったほうがいいだろう。ジャンクフードは高いGI値のものが多い。

アルファ30「主な食品のGI値」

参考までに下のグラフは中~高GI値のパスタやリンゴジュースを飲んだときである。

(左上は食前の値なので気にせず、食事の時間であった縦棒の目盛りから右にグラフをたどっていき、上がり下がりを見てほしい)

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血糖値が107から短時間で急激に140近くに上昇しそのあと同じ速度で下降している。約1時間半後にはなんと食前よりも低い値になってしまっているのだ。これでは安定した知的作業はとてもできない。実際、このようなときは強い眠気を感じた旨のメモが残っている。

さて、血糖値の急上昇、急降下がそれほど起きないと言われている低GI値食品のグラフが気になるところだ。私は全粒粉を購入し、市販のパンではめったに見ない全粒粉100%パンを焼いて実験してみた。

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GI 値50 とされる全粒粉100%パンを単体で食べた結果がこれだ。

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なんと一時間半をかけて急上昇し、同じ時間をかけて急降下、そして食事前よりも血糖値が下がってしまった。もちろんこのときは強い眠気を感じていた。

GI値食品さえ選べば血糖値が安定する、などということはなかったのだ

時間こそ2倍に伸びてくれてはいるが、血糖値が急降下する段階ですでに眠気が発生してしまうため結局体感のパフォーマンスは高GI値食品とほとんど変わらない。

これはフルーツも同様である。フルーツはブドウ糖と果糖が半々であり、果糖がブドウ糖糖新生で変化されるまで時間がかかるので低GIなものが多い。さらに食物繊維によって消化時間も稼ぐことができる。しかし実際に計測すると食前より低下することはなかったもののスパイクは起こしてしまい1時間程度しか持たなかった。

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何かと一緒に糖質を取るとどうなるか

野菜や肉類と一緒に全粒粉100%パンを取ると理想的な血糖値のグラフになった。このときはアプリのメモにも"調子いい"などが多く残っており、かなり集中を維持できていた。このグラフだけではなくほぼ再現性のある結果だった。

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ただし、やはり高GI値の糖質は何かと一緒に摂取しても1時間程度のスパイクが発生してしまう。それでも単体で摂るよりはましだが。

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どんなとき不調だったか

  1. 平均的な血糖値が100前後だったがこれを下回るとき眠気や苛立ちがあった。メンタルに大きく影響したことさえあった。これは空腹時はもちろん、血糖値スパイクにより食前よりも血糖値が下がったときにも発生する。
  2. 意外なことに、血糖値の絶対値が130程度と高くてもピークから急激に下っているときは強い眠気があった。一度だけではなく再現性があった。理由はわからないが、中毒からの禁断症状のようなものが糖質と脳の関係でも生じているのだろうか?

夜間に低血糖を起こしていた...!

これはある晩の Fitbit の睡眠ステージのグラフである。赤い部分が覚醒してしまっている時間帯だ。これがなんと血糖値センサーでの低血糖の時間帯と一致していた。

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かれこれ20年ほど悪夢と中途覚醒に悩まされていたがもしかしたら低血糖症をおこしていたのではないか?それも、発達障害特有の症状だと考えられる。低血糖症の要因は加齢や糖尿病が主らしいがそれには私は該当していないからだ。

考察

だいたい説明してしまっているが以上のデータから得られたことをまとめる。

日中の眠気の原因の一つは食事の仕方にある。糖質の食べ物単体を空腹時に食べると(1)インスリン分泌による血糖値急降下時(2)降下後の低血糖によって眠気が出るようだ。知的活動を続けるには間食を避け食事は野菜や肉類などバランスよく食べるのが良いという当然の結論になった。デスノートの L とか、創作の世界の天才は甘いものが好きというプロフィールがあったりするが現実でやるとデバフになってしまう。

また、夜間低血糖は悪夢とか中途覚醒を引き起こすようだ。晩御飯はしっかり、これも野菜や肉類と一緒に食べて腹持ちを良くして対処したい。

しかし、ここまで悩んでいるのは自分だけのようにも思える。こんなに追及しなければならないほど周りは追い込まれていないぞ...

ここで新しい仮説を考えた。自分は特に血糖値の降下がしやすいのではないか?ほかの人々はあまり気にしないで食べても大丈夫だから平気でいるのではないか?

冒頭に挙げた書籍の悪循環を思い出す。

  1. 慢性的に腸内環境が悪くなっている
  2. このために栄養素からの脳内伝達物質の生成がうまくいっていない
  3. さらにビタミンB群不足によりブドウ糖以外からグリコーゲンを生み出す"糖新生"が働きにくくなっている
  4. 食後のインスリン分泌による血糖値の急降下に対処できず低血糖になっている
  5. 低血糖は衝動性、イライラ、不注意を生み出す

そう、今回確かめられたのはこの"糖新生がうまくいっていない"というところまでなのだ!それは何故なのかを突き止めることでさらに安定した血糖値が得られるかもしれない。

次回

やはり腸内環境が悪いのかどうかを確かめる必要がある。よく発達障害に効果があると言われているグルテンフリー、カゼインフリーの生活だがこれは発達障害者がグルテンカゼインに対する遅延型アレルギー(数日たって不調が現れるタイプのアレルギー)を持っており、これが消化器官に負担をかけているという説からきているものだ。

3万数千円でこれに対するアレルギーを持っているかどうか調べることができるらしい。こういうやつ。 f:id:ishn:20210617215424p:plain IgG96スタンダード・フード・パネル(日本) - アンブロシア株式会社|アレルギー検査キット アレル・チェック|食物アレルギー|遅延型フードアレルギー

今後、 IgG抗体検査を実施し遅延型食物アレルギーの対策を数週間行った後に再度、同じセンサーを使いグラフの出方に変化があるかなどを後編として報告したいと思う。

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剥がしたセンサー。2週間おつかれさま